今年の夏、スーパーで見つけて、
梨を買ったことがあった。
種類は豊水。
あとから調べた感じだと、豊水は、
日本で清算される梨の30％を占め、
生産量は第二位らしい。

梨なんて久しぶりだった。
僕は果物が好きなのだが、
うちの妻は果物アレルギーなので、
食卓にはほぼ出ない。
食べたければ自分で買えばいいのだが、
それもなかなか面倒で、
好きなのに遠ざかっていたのだ。

僕がシャリシャリ梨を食べていると、
横から妻が一つだけ、梨を横取りした。
まぁそんなことで腹を立てるほど小さい男ではないので、
何も言わず黙っていた。
しばらくすると妻が、
「痒くならない！梨なら食べれる！」
と言うのだ。

アレルギーだから食わず嫌いをしていたが、
大丈夫な果物もあるようだ。
梨はその部類に入る。
そこからしばらくは我が家で梨ブームがあり、
二人でシャリシャリしていた。
僕はそれが嬉しく、
我が家にも果物がやってくる頻度が増えるかも、
と期待していた。

そして秋。
スーパーには秋月、という種類の梨が並んでいた。
豊水より値段が高かったが、一つ買ってきた。
家に帰って、ドヤ顔で妻に報告すると、
「梨かー。でももう私の中でブームは終わってるんだよね」
と言う。

妻の喜ぶ顔が見たくて買ってきたのに、
なんとひどい話だろう。
いや、もちろん自分が食べたかったのもあるが、
せっかく果物の素晴らしさをわかってくれたと思ったのに。
これでは前に逆戻りだ。

まぁ、独り占めできると思えば良いか。
さっさと風呂に入って、
湯上がり梨を楽しむことにしよう。
秋の入り口、秋月の夜、ってか。